山形県 - 山形市 2022年

YOK 空の矩形と軒下 / 山形の住宅

山形市中心部の密集地に立つ、軒下空間と空いた中庭から、ぽっかりと切り取られた空が見える、平家のボリュームが軽やかに浮かんで見えるような住宅である。

敷地は、山形城址北東部、2、3階建ての建物や貸駐車場に隣接する山形市の中では街中の建物が混在する密集敷地である。眺望が望める環境とはなかなか言い難い。奥に両親が住む母屋があり、手前を貸し駐車場としていた場所へ、住宅を増築する計画である。家族分の駐車場としての台数を確保すること(山形では家族一人一台が基本である)、奥の母屋へのアプローチを確保すること、街中でありながらも抜けのある開放的で魅力的なリビングなどを求められた。

私も出身は山形であり、気候条件は肌身をもって重々承知である。冬は雪が多く降り寒く、夏は盆地特有の厳しい暑さになる過酷な気候条件の山形という土地柄のことも考慮し、1階はできるだけガランとしたピロティ形式とし、それ以外の居住空間を2階に持ち上げる建ち方とした。そうすることで、母屋へのアプローチを確保し、家族分の駐車場を確保している。1階は玄関と寝室空間を最小限に設け、それらのボリュームを柱脚に見立て、ほとんどがピロティになっている。除雪をしなくてよい駐車場空間であったり、暑い日差しから守られた風の抜ける軒下空間は、子供の遊び場やBBQスペースなど第2のリビングと呼べるような豊かな半外部空間が街に開かれている。

2階ボリュームは、真ん中にぽっかりと余白となる中庭吹き抜けを持つロの字型の形状になっている。外周の開口部を極力絞り高さを低く抑え、真ん中の中庭に高さをだすことで、空への意識を高めるワンルームの空間にしている。幅が必要なリビングやダイニングは、敷地の成りに合わせることで必要な幅を確保している。どこにいても、余白に開くことで全体が見渡せ光や風を感じ、1階、2階、空が繋がっていく。空の開口部は、4mx4mの正方形をトリミングするように移ろいゆく空を切り取る。中庭は樹脂トリプルガラスを採用することで、気候条件の厳しい地域でも、開放的で明るい住宅を実現している。

2階はロの字の角に2箇所の螺旋階段があり、一方は玄関、その対角は寝室に繋がっている。玄関の螺旋階段は縦長のギャラリーのようになっている。丸い階段を上がると、リビングとダイニングキッチンに分かれ、リビング→子供の遊び場ロフト→子供室→寝室螺旋階段と空間が連続している。ダイニングキッチン側は、パントリー→洗面ユーティリティー→浴室→トイレ→寝室螺旋階段が半分閉じる形で上部だけは連続している。全体が片流れのシェルのような空間になっていて、どこにいても見渡すことができるし、どこからでも空と軒下が見通すことができる。寝室は天井が高く、将来的な部屋の増築が可能である。

工事期間はウッドショックにちょうど巻き込まれた時期である。当初想定していた大断面米松集成材が手に入らず、途方に暮れていた頃、工務店の紹介で県北の金山の森林組合と奇跡的に出会うことができた。金山杉は山形の杉の銘木で、金山杉で家を建てるのは憧れである。金山杉は、大断面の木材を確保できることが特徴で、公共など中規模な建築にもロングスパンの梁として使用されている。一般的な材は製材された中から発注するので大断面材は作りにくい。その点、金山杉はオーダーされてから木を切るところから始め、乾燥、製材するので特殊な長さや大きな太さもオーダーすることができた。実際金山まで足を運び山を見学し、建方で組み上げられた加工は本当に見事だったし、山形で金山杉を使って建てられたこの住宅は施主にとっても誇らしく感慨深いだろうと感じた。

キッチンでゆっくりと趣味のコーヒーを入れる、刻々と移り変わる自分だけの空を眺め、軒下では楽しそうに子供達と両親が遊んでいる。都市の余白を取り込み、パブリックとプライベートが混ざり合う、そんな情景が浮かぶ豊かな場所に挟まれた間の家である。

住宅実例情報

施工エリア 山形県山形市
カテゴリー 新築(戸建て)
家族構成 夫婦 ファミリー 二世帯 子ども三人以上
価格帯 -
竣工年 2022年

設計事務所/施工会社

社名 Ginga architects 一級建築士事務所
住所 宮城県仙台市若林区石名坂95-10
TEL
施工対応
エリア
宮城県、山形県、福島県

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